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もうれつ先生〔完全版〕【上】
寺田ヒロオ
マンガショップ
B6判 並製本 336頁 2010年3月発売
本体 1,800円 税込 1,980円
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『もうれつ先生』全3巻で刊行!
テラさんの代表作『暗闇五段』の原型となった
柔道漫画が幻の第二部を完全収録して帰ってきた!
あらすじ
かつて講道館の赤鬼とよばれた青年柔道家もうれつ先生は、長い修行
の旅を終えもうれつ道場を開いた。無敵の強さと心優しい人柄がたち
まち評判となり、道場の入門者は後を絶たない。やがて、講道館柔道
五段の美女鬼姫と鞍馬山でともに修行した親友黒鬼が、もうれつ先生
のもとに集まり道場は毎日にぎやかだ。ところが、もうれつ先生を妬
む黒帯道場の門弟たちがもうれつ道場を襲撃。鬼姫と黒鬼の活躍で追
い払うものの、講道館の実力者である青鬼が影で黒帯道場を操ってい
ることが明らかになるのだった。果たして青鬼の狙いとは?そして、
もうれつ先生が道場を開いた本当の理由とは?
解説:中野晴行
寺田ヒロオの柔道マンガと言えば『週刊少年サンデー』に連載された
『暗闇五段』(1963〜64年)が有名だが、私は1958年から61年にかけて
月刊誌『少年』に連載された『もうれつ先生』のほうが好きだ。もちろ
ん、54年生まれの私がリアルタイムで読んだはずはない。私が初めてマ
ンガを読んだのは61年の冬。お習字教室の若先生に手塚治虫の単行本を
借りたのがはじめである。『もうれつ先生』も連載が終わって数年経っ
てから、貸本屋の単行本で読んだのである。
この時代は、雑誌連載のマンガが単行本化されることは珍しく、単行
本化されても雑誌の版元ではなく、貸本専門の版元からというのがほと
んどだった。『もうれつ先生』は東邦図書出版社という版元からA5判
ハードカバーの単行本で刊行されている。東邦図書出版社は、白土三平
の『忍者旋風』や『シートン動物記』などで有名だが、手塚治虫の『ナ
ンバー7』や横山光輝の『伊賀の影丸』の最初の単行本もここから出て
いる。
わが家では、学年誌以外の子ども雑誌は買って貰えなかったので、マ
ンガ雑誌は友人の家か床屋で読むもの、単行本はこっそりと貸本屋で借
りて読むものだった。小沢さとるの『少年台風』も石森章太郎の『少年
同盟』も、みんな貸本屋でA5判の単行本を借りて、夜中に布団の中に
電気スタンドを引っ張り込んで隠れて読んだ記憶がある。
この復刻版も下巻の冒頭までは、東邦図書出版社版全5巻を底本にし
ている。B5判の雑誌連載をA5判で単行本化する時には、4段組のコ
マ割を3段組に直すので、どうしても初出通りというわけにはいかない。
ただ、編集部に確認したところカットされた部分はないそうだ。いずれ
にしても、私にとっては、昔読んだスタイルのまま読めるのがなにより
嬉しい。しかも、下巻には、単行本になっていない第二部が雑誌と別冊
付録からそのまま復刻されて入っている。これで二度嬉しいのだ。
ストーリーは、悪がはびこる街にふらりと現れたヒーローが、街の人
々の信頼や応援を得て、卑怯な悪人たちを懲らしめ、街に平和を取り戻
す、という時代劇や西部劇の映画でお馴染みの筋書きである。とは言え、
少年誌にこうしたスタイルを持ち込んだのは、当時としては斬新だった
はずだ。
主人公の赤鬼こともうれつ先生が大人であること、女性柔道家の鬼姫
との恋や、第二部でふたりが結婚し新婚旅行に出かけるあたりも、60年
代の少年マンガにはちょっと珍しい展開だろう。少年マンガの主人公は
少年で、恋はしないのが普通だった。恋愛を描いたのは手塚治虫くらい
じゃないだろうか。
しかも、赤鬼のもうれつ流柔道は、スーパーマン的荒唐無稽なもので
はない。相手の力を利用して技をかける理論的な柔道であることが随所
に説明されていて、強さが子どもにも納得できるものだった。
実在の講道館を想起させる広道館というネーミングや、小兵ながら
「空気投げ」という技を編み出して講道館の最高位十段となった名人・
三船久蔵がモデルと思われる五船十段を登場させたあたりもうまい。
外国人ボクサーとの賭試合や暴力団とのいざこざなど、大人の世界の
暗い側面も描かれている。青鬼の卑劣さは、大人の社会ではそれほど珍
しいものじゃない。第二部には癌で死んだ父を赤鬼に投げ殺されたもの
と信じて、復讐を志す柔道少年も出てくる。影のある美少年の走りかも
しれない。
「寺田ヒロオのマンガはホノボノした健全な児童マンガ」と評価する人
が多いようだが、『もうれつ先生』に限って言えば、世の中の仕組みを
リアルに描いていて、私が貸本屋で借りて読んだからそうなのかもしれ
ないが、劇画の影響を感じさせるのだ。
貸本の世界では、56年に日の丸文庫から『影』が創刊され大評判にな
っていた。「劇画」という名称はまだ使わないまでも、それまでの児童
マンガとは違った、青年を主人公にして現実の暗い側面や恋愛も描くよ
うな新しいマンガ表現が模索され、注目されるようになっていたのだ。
寺田ヒロオも友人のマンガ家・棚下照生などを通じて貸本マンガの新
しい潮流を知り、それに着目していたはずだ。劇画的なテクニックも取
り入れながら、子どもたちのために勧善懲悪を貫いたところに、寺田の
真骨頂を感じ、彼のジレンマも垣間見えるような気がする。
もちろん、幼稚な子どもだった私がそんなことを考えたわけではない。
それでも、学年誌で読んでいた『スポーツマン金太郎』などとは違った、
大人の寺田ヒロオの世界にどこかかっこよさを感じたのは覚えている。
だからこそ、何度も借り出しては、繰り返し繰り返し読んだのだろう。
なお、『もうれつ先生』は実写ドラマ化されて、1960年にフジテレビ
系列で放送されている。ところが、すでに、わが家にはテレビがあった
はずなのに、観たという記憶がない。ちょっと残念である。
主な登場人物
●もうれつ先生…かつて講道館の赤鬼とよばれた正義の柔道家。
●染井吉野…美人だが柔道五段の猛者なので皆から鬼姫と呼ばれる。
●黒鬼…もうれつ先生の親友で、ともに鬼天流柔道を修行した仲。
●グラチン・ボコチン・デコチン…もうれつ道場一番弟子のわんぱく三人組。
●青鬼…講道館実力ナンバー1。過去にもうれつ先生と因縁がある。
●五船十段…講道館の代表者。もうれつ先生の育ての親でもある。
上巻初出
「少年」(光文社)
昭和33年(1958年)1月号〜12月号
●お客様の声
この殺伐とした平成の世に寺田先生のような健全で心温まる漫画はどの雑誌を開いても読めません。なので『もうれつ先生』その他の寺田作品を今読むと逆に新鮮に映りますね。[東京都 D.O様]
著者紹介
寺田ヒロオ(てらだ ひろお)
昭和6年8月4日新潟県巻町生まれ。電電公社(現:NTT)に就職するが
漫画家への夢を捨てきれず、昭和28年に上京。同年「漫画少年」での
掲載からキャリアをスタートさせる。昭和32年6月まで東京椎名町の
アパート「トキワ荘」で暮らし、若い漫画家たちと交流を深め、藤子
不二雄氏らとともに“新漫画党”を結成。日本漫画界の発展に貢献した。
代表作は『背番号0』『スポーツマン佐助』『スポーツマン金太郎』
『もうれつ先生』『暗闇五段』など多数。
平成4年永眠。
ISBN 9784775913680
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