原作者・永井豪氏自らの執筆による『キューティーハニー』は、『あばしり一家』終了直後の「週刊少年チャンピオン」1973年第41号(10月1日号)から翌年第15号(4月1日号)まで連載された。TVアニメ連動作品の常として、本作には同名の競作版が、複数の作家によって描かれている。
岡崎優氏は、講談社の児童向けTV情報誌「テレビマガジン」1973年10月号から翌年2月号まで、同じく講談社の月刊少女マンガ誌「なかよし」1973年11月号から翌年1月号まで、ダブル連載を手掛けた。少女漫画のテイストを残す氏の絵柄は、少女を主人公としたこの作品によくマッチしている。岡崎版では、ハニーがアンドロイドであることが明言されていないが、これは対象読者層に鑑み、彼女の背負う悲劇性を緩和しようという配慮だろう。
「テレマガ」連載版第1話は、パンサークローを「ひょうのつめ」と表記しているなど、細部が固まり切っていない段階でコミカライズに着手した形跡がある。その後も基本的にはアニメ脚本をベースとした内容で、第3話からはハニーフラッシュの際に着衣がはじけ飛ぶ描写が加わり、シスタージルの仮面もTVアニメに近いデザインに改められた。
「なかよし」連載版は、登場パンサーが「テレマガ」連載版と完全に重複しており、両バージョンを比較してみても面白いかもしれない。読み手が少女であることを意識してか、やはりアクションよりも学園や寮での生活描写に重きを置く傾向が見られる。第2話からのハニーの服が、襟のないTVアニメ準拠スタイルになる点も「なかよし」版の特徴だ。両者とも、今回が初の単行本化となる。
石川賢氏は、秋田書店の少年月刊誌「冒険王」1973年11月号から翌年4月号まで、同じく秋田書店の「別冊冒険王 映画テレビマガジン」1973年11月号から翌年2月号までのダブル連載。登場パンサーのうち、トマホークパンサー、イーグルパンサー、ツインパンサー、ドリルパンサーなどは、氏がTVアニメ用にデザイン原案も描いており、その一方でジェットパンサーやアトミックパンサーなど、TVに登場しないオリジナルの敵も多い。両連載間で登場パンサーの重複はなく、また学園描写がほぼ存在しない点でも岡崎版とは好対照をなしている。まず事件性から導入される点も石川版の特徴で、氏が得意とする緩急に満ちたバイオレンス描写は冴えに冴え、独特の悲壮感とセンチメンタリズムを内包しつつ、カタルシス溢れる痛快バトルストーリーに徹している。
殊に「映画テレビマガジン」版第4話などは、敵も含めて完全に忍者マンガのノリ。氏が同誌で本作の直前まで『変身忍者 嵐』を連載していたことも、蛇足ながら追記しておこう。
「冒険王」版は、過去に単行本化され、「映画テレビマガジン」版も一部、または全部がアンソロジーなどに所収された例はあるが、そのすべてが一冊に収録されるのは今回が初めて。正に「完全版」である。
Np.6 ブラッククロー ……P.71
Np.7 バッドフライクロー ……P.87
Np.8 ジャンボパンサー ……P.103
「なかよし」(講談社)1973年11月号〜1974年1月号
原作:永井豪 漫画:岡崎優
Np.9 ハニーちゃん登場の巻 ……P.119
Np.10 イーグルパンサーの巻 ……P.149
Np.11 ツインパンサーの巻 ……P.179
Np.12 幻術使いの巻 ……P.209
Np.13 アトミックパンサーの巻……P.243
Np.14 魔女ジルの巻 ……P.265
「冒険王」(秋田書店)1973年11月号〜1974年4月号
原作:永井豪 漫画:石川賢
Np.15 ブラッククローの巻 ……P.287
Np.16 シザースパンサーの巻 ……P.305
Np.17 ジェットパンサーの巻 ……P.320
Np.18 妖剣ものほし竿の巻 ……P.338
Np.19 鉄仮面の巻 ……P.355
「別冊冒険王 映画テレビマガジン」(秋田書店)1973年10月号〜1974年2月号
原作:永井豪 漫画:石川賢
中島かずき スペシャルエッセイ
「ハード&マイルド〜二つのハニーが持つ魅力〜」……P.371
作品解説……P.375
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